つづくねっこシリーズ① 「とるにたるちいさいこと」2 abe yoshi

Fietsvakantie

5月にオランダ人の友人と2人で、10日間ほどFietsvakantie(自転車バケーション)に行った。
日常生活の移動以外で自転車を使うのが初めて。自転車にキャンプ道具を乗せるのも、自転車を電車に乗せるのも初めて。しかも国際線。子供を産んでからこんなに母親ロールから離れるのも、友人と旅行するのも初めてだった。
勢いでFietsvakantie行きを決めたはいいけれど、私はビビりまくった。
せめて物質的な準備くらいしっかりしたい。でも、何を準備したらいいかわからない。
それでも調べたり人に聞いたりするうちに、自分は4年ほど所有していたマウンテンバイクのことを何にも知らないんだとわかった。
面白いおもちゃを持っていたんだな。
友達のアドバイスに従い、雨でも風でも毎日その自転車に乗って慣れていく。
そのうち、ちょっとの雨なら躊躇なく乗れるようになった。このくらいの天気だと不快だな、このくらいの荷物は辛いな、と塩梅もわかってきた。

そして出発。
オランダでは電車に自転車を乗せる人は珍しくないのだけど、私はその人じゃなかった。
キャンプの荷物も載せているから少しの段差でもバランスが崩れてひっくり返りそうになる。当日は友人と合流するまで、服の上から心臓のバクバクが見えるくらい緊張した。
ドイツ鉄道では前輪を頭上に引っ掛けて吊るさないといけなかった。私の身長とパワーでは自分で駐輪できない。ハンドルが干渉し合うから、その場の人たちと協力してテトリスのように駐輪した。誰かが乗り降りするたびに周囲の人との協力が必要だった。
他者の善意を前提に旅行に挑戦できるなんて強いなぁと思った。私は彼らほど他人を信用できていないかもしれない。
宿泊場所は、標高の高い湖畔のシンプルなキャンプ場だった。滞在中は地元の人に憐れまれるほど寒く濡れた日が続き、テントには雨漏りが発生し、夜は氷点下になる日もあった。
凍えて眠れない夜はちょっと泣いた。
初日は簡単な湖周辺のサイクリングコースを選んだ。しかし途中で年に一度のマラソン大会にバッティングし、仕方なく回り道へ。普段使ったこともない一番軽いギアでも登れない坂を上り、石がゴロゴロした坂を必死に下った。
友達がちょっとした技術などをアドバイスしてくれるが、サイクリングは私の趣味にはならなそうだなと思った。それでも気合いと根性でなんとかキャンプ場に戻れた。
我ながら頑張った!久しぶりの青春気分だった。

翌朝、ふくらはぎの付け根に違和感があった。痛くはない。このまま動けば数日で身体が慣れるかくらいに考えていた。ハードなチャレンジしちゃってるぜ自分!と少しテンションが上がっていたかもしれない。
しかし、友人は注意深かった。
「なんで休まないの?」「始まったばかりだし、慣れないと!」「なんで一日休みたくないの?」「痛くはないし。無理になったらやめるよ!」「その前に休まないの?」の押し問答が続いた。
せっかく始まったばかりなのにと思いつつも、少し休んだらかなり良くなった。
その後は、自分の心身で起こっていることを観察しながら(これが自分の身体に耳を傾けるってやつ?)、どこが限界かわかんないけどやってみる!でもなく、今までできてた範囲に留まるでもなく、その塩梅を探る感じもまた興味深かった。こんな身近にこんな未開拓のフロンティアがあったとは!

日程の途中、悪天候すぎてハイキングもサイクリングもテントに籠ることもできない日があった。それで、名前が気に入った街Baden-Badenに行ってみた。
絶対に温泉があるはずだ!と調べると、何とテルマエがある!完全全裸&混浴のクラシックタイプ。私は日本でも温泉が苦手なのだけど、初体験だらけのVakantie、勢いで行ってみることにした。
老若男女が素っ裸で寝椅子に横たわっている狭い部屋に、足元から入場する。初っ端からすごい光景。目を逸らすスペースもない。何も考えないように努めて、自分も素っ裸で横になる。
老若男女、ナイスバディのお兄さんもお姉さんも、おじいちゃんかおばあちゃんかわからない人たちも、でっかい人も小さい人もいた。
途中、フレスコ画が美しい冷水プールで、お姉さんが気持ちよさそうに浮かんでいるのを見て、自分も素っ裸で平泳ぎをしてみた。カエルみたいに。ものすごい開放感。
周りの人にどこまで見えているかわからないけど、どうでも良くなった。自分が子どもに戻ったみたいだった。
沢山のいろんな裸と過ごして、最後にはただ、皆んなホモサピエンスだな〜と思った。

行く前はほとんど不安とか怖いって感情だけに支配されていたけど、終わったら、こんなに初めての世界がまだまだあるんかい!って楽しくなった。
欲しいアイテムが、調べたい事が、たくさん沸いてきた。
バケーションにいくと、リフレッシュして元の自分に戻れると思っていた。
でも今回は、まだ自分の中に知らないことがあって、それを開拓できているのが嬉しかった。
この夏には子どもを訓練して、自転車キャンプを楽しんだ。まだまだ飽きずに遊べそう!