「B面」- HEY ヤン・ボー HEY HEY HEY HEY

はじめて楊博さんの作品を見たのは東京藝大の学部卒業予定生の展覧会、いわゆる卒展だった。3、4年前くらいだと思う。ドでかい、作品というよりもプロレスのリングみたいで、キャンバスが太い木枠にくくりつけてあって、そこには「HEY MR IGGY POP HEY HEY HEY HEY」と描いてあった。

絵の具を使って(稀に使ってないこともありますが)造形をするのが絵画の試みだとひとまずは言えるとする。ただ、そこにあった作品を通して楊さんが実践していたのは、絵の具とキャンバスのせめぎあいだとか、描かれているものへの考察だとかに一瞥もくれず、びっくりするくらいシンプルな、グラフィティのように一瞬で描けそうなワンセンテンスを、具現化するにはなかなか根気が求めらるプロセスとともに、立ち上げる―そんなことだったように感じた。(もちろんそれは絵画だったと間違いなく言えるキャンバス面のクオリティも同時に感じたけれど。)

よほど題材に悩んだ末なのか、よほど確信的(革新的)なのか、よほど絵が好きなのか、よほどイギー・ポップが好きなのか。ヘイ ヤン・ボー ヘイヘイヘイヘイ…どうなんだい? この作品を通して楊さんを初めて知った僕はちょっと圧倒された気分だった。

卒展会場には学生の皆さんによる大変な数の作品があり、それぞれの作品には卒業をひかえた制作者の思いが詰まっている。そうしたものを見て周ると、なかなか疲れるので、上野の駅ビルあたりでビールを飲んでリフレッシュを図りつつも、頭のなかでは”ヘイヘイヘイ ヤン・ボー“がループしていたことを鮮明に覚えているし、このフレーズはなぜか頭からなかなか離れずにいて、今も時おり口ずさんだりしている。

そして数年後、楊さんご本人に会ってみると、愛嬌と隣合わせのシニカルさや、あっけらかんとしたクールさの裏で、絵画への熱意がほとばしっていて、なんだか色々納得させられたのだった。

今、ギャラリーでは、楊さんの初めての個展を開催している。展覧会タイトルは「Fly me to the moon sequence2 : Three MC’s and One DJ」。「HEY MR IGGY POP HEY HEY HEY HEY」を超え出る謎謎のようですが、楊さんならではの世界観のもと名画の数々を紹介しています。2月20日までの会期(残り2日!)です。ご来場お待ちしています。

2021.2.18 菊竹

展覧会の詳細はこちらよりご覧ください。楊さんの試みをより具体的に紹介しています。
http://www.ykggallery.com/exhibitions/yangbo-flymetothemoon/