「B面」- 今日 が 柵になる

私事ですが今週末に40歳になります。

歳というものを数字で図るのも甚だ理不尽だよな、とよく思いますが、
とは言え、幼い頃に想像していた40歳(例えば父の40歳の姿を思い出したりしつつ)は、
もっと大人だったはずで、人間なんてこんなもんか、と可笑しくなってきます。

振り返ることが増えると人生は短く感じる。
振り返ることがそんなになかった幼い頃は毎日が永遠に続くように感じた。
つまり振り返らなければ、人生は長く長く感じるのだろうか。しかし、それは理性を放棄している?
ふと想えば、高校生くらいから自分の基本的な精神性は大きくは変化していない、
高齢者になっても案外そんなもんで、やはり人間ってこんなもんですかね。

こんなことを先日とある尊敬する写真家の方と話していました。

そんな最中、小説家・滝口悠生さんの文章を最近読んでいて出会った言葉ー
「思い出して、その日について書いてみると、その日は特別なものになり、束の間、その日を中心に自分の人生が編み直されるような気持ちにもなるもので、書くというのは不思議だし、思い出すというのも不思議で、思うようにコントロールできませんね。思い出す前と思い出したあとでは人生が変わってしまうし、書く前と書いたあとでもそう。
そう考えると、日々日記を書くというのはあらためてすごいことで、書くたびに、それまで生きてきた時間とこれから生きる時間の両方を編集し続けるようなところがあるかもしれない。」
(「往復書簡 ひとりになること 花をおくるよ」植本一子 滝口悠生 共著 より)

今、ギャラリーでは「至るところで 心を集めよ 立っていよ」というタイトルのグループ展を開催しています。

参加アーティストのひとり、関川航平さんは作品を日々連続する行為として成し、
ご自身が持っていた無花果の鉢植えをギャラリーに設え、休廊日も含め毎日ギャラリーにやって来ては、
土の状態を確かめ、水やりのタイミングを選び、水やりを行った日には毎回同じ文言をギャラリーの壁に記していきます。

「光 を受けた葉が 吸い上げた水 を放ち鉢の土を乾かし 私 は水を与えた 今日 が 柵になる」

無花果はこの会期中も日々変わるなか、同じ文言が書き連ねられていきます。
「今日 が 柵になる」ー 
同じ行為を繰り返しながらも、しかし、同じようにみえても日々は必ず異なり、一瞬先に起こることさえ分からないという事実をもって、このパフォーマンス作品は幾葉にも織り込まれ、「柵」となり、残る。

滝口さんの文章と照らし合わてみると、「柵」が、思い出すことと思い出した後のちょうど結束点のように、
とても尊い、一瞬のきらめきのように感じてきます。

そんなきらめきを胸に過ごせたら、いったいどんな日々になるのでしょうか。

世界って、人生ってやはり面白いな!と痛感させられる作品に出会え、この展覧会を生み出してくれた皆さんに、
勝手ながらとても素敵な誕生日プレゼントをいただいたような気持ちです。

8月6日までの会期、是非お越しください!

菊竹 寛


「至るところで 心を集めよ 立っていよ」
関川航平、中島吏英、古橋まどか

7月7日(木)- 8月6日(土)
12:00-18:00 日・月・祝 定休

展覧会の詳細はこちら

[関連イベント]

・関川航平によるイベント

日時:7 月 23 日(土)/ 30 日(土)/ 8 月 6 日(土) 各日 16:00 より
会場:Yutaka Kikutake Gallery
* 事前予約不要 * 入場制限を行なう場合があります。ご了承ください。

・坂田明 × 中島吏英:ライブパフォーマンス「おとになる」
日時:8 月 7 日(日)開場 18:30 / 開演 19:00(終演予定 21:00)

会場:Li-Po(〒 150-0002 東京渋谷区渋谷 3-22-11 サンクスプライムビル 4F-A)

料金:3,500 円+オーダー
定員:30 名(予約優先)
企画:カワイイファクトリー
予約:Li-Po イベント予約フォーム

中島吏英は、Yutaka Kikutake Galleryでの展示最終週となる8月2日〜6日に展示作品が追加される予定です。


本文に引用させていただいた滝口悠生さんとは8月28日と9月4日にワークショップを開催します。
皆さんのご参加をお待ちしています!

テラ塾 空蓮房 ワークショップシリーズ:「ことばトおと」

テラ塾 空蓮房で新しいワークショップシリーズ「ことばトおと」を開講します。
初回は小説家の滝口悠生さんとともに開催する「ことばでスケッチ(散歩して日記を書こう)」です。

まず、第1回で蔵前にある長應院・空蓮房のまわりを散歩して、その時間をもとに日記を書きます。続いて第2回で、その日記をそれぞれご自身の声で音読し、感想を言い合い、最後は受講者の皆さんの日記が冊子となってご自宅に届く、という2回にわたり開催するワークショップです。
音読の際には、長応院の本堂にある仏具の一部であるさまざまな楽器を使ってもOKです。声のお手本に、長應院の住職・谷口昌良さんによる声明体験も予定しています。

ところで、散歩の時間は、作品を鑑賞する時間にも、仏教でいう瞑想にも、似ているところがあるように思います。
「ことばトおと」を皆さんで楽しむ会となりますよう、ご参加をお待ちしています。

会場:
長應院・空蓮房(東京都台東区蔵前4-17-14)

開催日時(全2回):
8月28日(日)15時~17時
9月4日(日)15時~17時

対象年齢:小学生以上
こどもから大人までご参加いただけます。

募集人数:10名

受講費:8,000円(2回分)
お子様への付き添いのみの場合は、お子様の人数分の参加費となります。

持ち物:筆記用具(鉛筆、消しゴム、ボールペンなど使い慣れた筆記用具)、必要に応じた蓋つきの飲み物

お申し込みはメールにて先着順での受付となります。
以下の情報を添えて、info@art-club.jp  までお申し込みください。
こちらからの返信をもってお申し込み完了とさせていただきます。

お名前(ご参加される人数全員分をお願いします):
年齢(ご参加される人数全員分をお願いします):
当日連絡のとれる連絡先:
メールアドレス:
ご住所: