Gallery ? スタッフBlog 「ふたりの対話」

Nerholはグラフィックデザイナーとして活躍する田中義久さんと、日本大学芸術学部で教鞭を執る教育者でもある飯田竜太さんのふたり組のアーティストデュオ。

人物や自然、ある土地や建物の歴史の記憶など、あらゆるものの“時間”を捉え表現する作家です。

植物や人物の顔、あるいはピアノを弾いている誰かの指先の映像からつくられた連続写真の積層を、まるで彫刻のようにノミやカッター、グラインダーを使用して表面から彫り進めることで、やがて不思議なイメージと、細部には荒々しい紙の断面が表出します。

Piano sonata 02, 2025

恐らくNerholと仕事をされた方々が口を揃えていうことは、作家ふたりが一緒にいる間は絶えず対話が行われているということ。

2024年の3月にNerholはメキシコのサン・ルイス・ポトシという都市で個展を開催しました。
その際にも現地の食べ物の味、リサーチで訪れた場所などふたりの間で会話が尽きなかったことを覚えています。

世界遺産のオアハカでふたりが“かけっこ”をしたことで飯田さんが高山病(首都メキシコシティは標高2000mを超えるそうです)のような症状が出た話など、愉快な掛け合いを隣でたくさん聞かせてもらったことを今でも思い出します。

メキシコ、サン・ルイス・ポトシにて

時折垣間見るふたりの在り方からは、時間をかけた膨大なリサーチ、幅広い知識と先人や歴史への敬意が作品に裏打ちされていることも伺えます。

現在Yutaka Kikutake Gallery Roppongiで開催中のNerholの個展「Household Vestiges(家の痕跡)」に際して、展示について話を伺う機会がありました。

ある場所で観測され、あまり表に出なかった出来事の記録を別の視点からみると、実は渦中にいる人々の意識に上がらない別の社会の動きによって引き起こされていることや、深い理由のないただの偶然から起きたことなど。

一元的に決めつけないことで掬い上げることができるものがたくさんあることに気付かされます。

田中さんの、「国境(という単位)を超えて、家族(という単位)を超えて、ある意味、網目状に全てが繋がっており、それをどの角度から俯瞰して見るかによって見え方が変わってくる。」という言葉が反芻されます。

展示風景 Museo Leonora Carrington、サン・ルイス・ポトシ