Gallery ? スタッフBlog 「トレヴァー滞在に寄せて」

トレヴァーが東京に着いた日、夕食の席で彼がいかに迷信深いかという話になった。彼に幸運をもたらすのは申年の人物らしく、彼はそれをモンキーパーソンと呼ぶ。私は申年だけれど数年前に軽い気持ちで訪れた占いで恐ろしい予言を受けて以来、東洋の占いから目を背けてきた。でもこれは信じてみたい。会話にたびたび登場する香港スピリチュアル界のマスターという人も相当気になる。

猿といえば、毛利さんとの二人展で展示したトレヴァーの作品《Holding Tight》のガラスケースは彼が東京でのリサーチトリップで訪れた骨董市でみつけたもので、通称「猿の箱」だ。ケースが収まっていたダンボールにマジックでそう書いてあったが肝心の猿は不在だった。作品に変身をとげたそれに、かつてそこにいた猿の姿を想像する。

Trevor Yeung《Holding Tight》2025

同じく《Fragile Stand and Hairy Crab》にも束の間とはいえ猿のフィギュアを載せる案があった。貝殻で装飾された台座の四つ脚を蟹が支える構図の作品だ。

Trevor Yeung《Fragile Stand and Hairy Crabs》2025

余った蟹に、猿を乗せて考え込むトレヴァー。
蟹は甲羅に覆われているが中身はほとんど水のようなものだ。縛られた上海蟹から連想する苦悶のイメージ。脆い貝細工の施されたスタンドを、じつは脆さを抱えた蟹が支えている。

「猿は?」
「自分にとって縁起がいいモチーフだから。動物として猿が好きかというと、ほんとはあんまり。ヒトに近すぎる」
「そうなんだ…」
「too muchになるから猿はやめよう」

この猿もまた幻になった。