Gallery ? スタッフBlog 「30分間の孤独」

1月30日から2月22日まで、空連房にてTrevor Yeungの個展 “寂寂(sabi sabi)”が開催されておりました。

空連房は、蔵前にある長応院の境内に建立されたギャラリーです。

週に3回のオープン、30分ごとに1組(最大2人)までの予約制だった本展の受付を約3週間ほど担当した中で、今回はこの展示について綴っていきたいと思います。

重い鉄の引き戸を開けると、自分の身長よりも低い入り口の向こうに、白い石が敷かれた細い道が現れた。少し屈みながら奥へ進み、靴を脱ぎ、段差を上がる。目に映るのは一面、白い部屋。壁と天井の角がなく、境界線がわからない。

まず最初に感じるのは香り。甘いような、それでいて馴染みのない匂いが部屋を満たしている。視線を向けると、白い空間の中心にぽつんと置かれたオレンジ色の貝——”Conch Juice (Seven Emotions)”。貝殻の内側にはTrevorが調合した7つのエッセンシャルオイルが閉じ込められ、それぞれの感情が香りとして漂っている。日によって香りが異なるように感じたのは、私自身が受け取る感情が違っていたからかもしれない。

その横の薄いカーテンをくぐると、淡く霞んだような黄色い光が広がる。靄がかかっているかのような不思議な空間。

部屋の隅には生き物のような小さなランプがまるで呼吸をしているみたいにゆっくりと光を放つ。

キノコを模したライトは——”Night Mushroom Colon (sabi sabi)”貝を模ったシェードがゆっくり光を受け止め、また放つ。じっと見つめていると静かに時間が溶けていくようだった。

真っ白な空間に戻り、壁に目を凝らすと、よく見ないと気づかないがうっすらとコーラルピンクの斑点が散らばっている。星座のような模様。

壁の傷を珊瑚の顔料で埋めた——”The past (ashes)” 一度鑑賞されたお客様に、どこにあったのかと必ずと言っていいほど聞かれる作品であった。

寂寂(sabi sabi)という展覧会タイトルは孤独な二人を表しており、孤独という共通点があることから、二人は完全に孤独ではない。しかし、孤独そのものは共有することができないから、共にいても孤独は消えない。

これは作品と鑑賞者の関係も同じであり、対峙するけれど、交わらない。

普段生活している中で自分と向き合う時間はなかなかない。30分間静かに自分の孤独と向き合うことをTrevorの展示を通して気がつかされた。

孤独なまま、五感を通して作品と向き合う。でも、孤独だからこそ、より深く入り込める。静寂の中で、目に見えないものが浮かび上がる。